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【スタートアップ深層】Nexar - 自動車事故リスクを低減し、世界初の安全運転V2Vネットワークを築く

 毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。


 今回は、Nexar 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。

【前編:Twik - EC業界初の自動パーソナライズプラットフォームを実現】はこちら


※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2021年2月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 


Mr. Eran Shiri(CEO)


◆ 自動車事故リスクを低減し、世界初の安全運転V2Vネットワークを築く


Nexar社(以下: Nexar)は、AIと車両間ネットワークを搭載した車載カメラを通じて、全ての自動車をスマート化し、世界初の安全運転V2Vネットワークを構築する。


同社共同創業者のEran氏は、イスラエルの連続起業家で、同氏が以前創業した会社(Dapper社)が2010年に米Yahoo!に買収されて以降、Yahoo!のイノベーションクリエイティブ部門のマネージャーを3年間務めた。そこで同氏の上司となったのが、Nexarの共同創業者Bruno氏で、両氏はクラウドAI領域の発展に大きな貢献をした。その後、最先端の技術・業界動向に関する知見を元に、市場チャンスを見出した両氏は、世界中の道路交通の安全性を高めるビジョンへ向け、2015年にNexarを創業し、2016年より同社のV2Vネットワークを展開し始めた。


今回は、共同創業者兼CEOのEran氏に取材を行った。

 

◆ 既存の先端技術を組み合わせ、ビジョンの実現を目指す


クラウドAIの領域で功績を残してきた同氏は、今後、機械学習・ディープラーニングが様々なデバイスに搭載されエッジコンピューティング技術が進んでいく兆候を2014年頃に掴んでいた。自律分散型でリアルタイムに情報処理を行うエッジAIの将来性に着目し、その技術的特徴と相性の良いコネクテッドカー、自動車業界に注目した。


「自動車業界の掲げるビジョンと現実のギャップが大きく、渋滞など交通環境は改善していない中で、車両個体の様々なセンサー情報を統合しV2Vネットワークを築くことで、広範な都市活動を支える大きなインパクトを与えられると考えました。」と同氏は創業への動機を語る。


同社の提供する車載カメラは、マシンビジョンとセンサーフュージョン(複数のセンサーからのデータを統合する技術)を搭載し、集計された画像・映像データをAI解析することで、交通事故の予兆警告をするなどドライバー向けADAS(先進運転支援システム)を提供する。これらのデータは自動的にセキュアなプライベートクラウド環境に保存され、事故の際には事故状況の再現による責任割合の自動算出など自動車保険にも役立つ。


さらに、GDPR(EU一般データ保護規則)にも準ずるデータ集計手法により、個人プライバシーを保護する形で、各車両から撮影される画像・映像データを収集し、交通道路状況(事故や工事による交通規制、新たな道路標識の設置など)をリアルタイムに反映した高精度地図を生成するなど、データプラットフォームとしてのサービスも提供する。


「クラウド・エッジAI領域における競争優位の戦略として重要なことは、データの量と質です。弊社の安価な車載カメラを既存のOEM車に搭載することで、テスラやGAFAが持つ自動運転データよりもスケールの大きいデータを収集することができます。自動運転が実現する前に、既存の技術を活用して安全な自動車運転ネットワークを築くことができるのです。」とNexarの強みとビジョンを同氏は語る。



図1. Nexarの車載カメラ(同社提供)

 

コンピュータ・ビジョンにおけるAWSの実現


同社の提供するデータプロダクトは、自動車・保険・地図業界のデータ活用に役立つと共に、地方自治体の都市計画の設計にも活用される。同社は既に、米国で製品・サービスを展開するが、日本の保険会社とも提携し、アジア太平洋地域への進出も図る。現在グロースステージに入り、製品の市場投入を進める同社は、自動車・カメラメーカーだけでなく、モビリティ業界全体との連携を深め、スマートシティの実現を目指す。


「モバイルアプリの次のトレンドは、ビッグデータを活用したリアルワールド・アプリケーションです。弊社のデータプラットフォームを基に、様々なサードパーティーがそれぞれのユースケースを作っていくことを願っています。例えば、バス運営会社が、バス停で待っている人の人数をリアルタイムで把握できるサービスを提供したり、近くの無料駐車場をお知らせするサービスの提供など、その用途は多様で広範囲です。弊社はコンピュータ・ビジョンにおけるAWS(Amazon Web Service)のようなクラウドサービスプラットフォームを目指しています。」と事業の展望に触れ、同氏は話を締め括った。

 

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 常に最先端のテクノロジーを取り入れてきた日本は魅力的なマーケットでありパートナー国です。私自身、日本の利他的な社会文化が好きで、それは弊社の理念・価値観にも協調します。弊社の事業モデルは、より多くの人、企業が参加することによって、より大きな社会的利益をもたらします。日本企業の皆様とパートナー関係を築き、新たな可能性を探索できることを楽しみにしています。

− Eran Shiri氏




◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 2月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。


【前編:Twik - EC業界初の自動パーソナライズプラットフォームを実現】はこちら

 


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