【スタートアップ深層】MyPrivacy - オールインワンのスマートフォン向けプライバシー管理アプリを開発

　毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

　今回は、MyPrivacy 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。

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※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2021年3月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

MyPrivacy（https://myprivacy.io/）

Mr. Yoav Degani（CEO）

◆ 誰もがプライバシーをコントロールできる世界を目指して

MyPrivacy社（以下: MyPrivacy）は、誰もが自分の個人情報を自らの手で監視・管理できる世界の実現を目指して2012年に設立された。

同社の製品の一つである「MyPermissions」は、プライバシー管理アプリとしてモバイル版・ウェブ版合わせて350万ダウンロードを超え、専門的な知識がない一般ユーザーからも高い評価を得ている。同社は2013年にシードラウンド、2015年にシリーズAで合計350万ドルを調達した。その後は収益ベースで企業を運営している。さらに2020年上旬には、スマートフォンユーザーに特化したプライバシー管理アプリ「MyPrivacy」の提供を開始した。

今回は、CEOのYoav Degani氏に取材を行なった。

◆ スタートアップのメンターとして活躍後、自身も再度起業に挑戦

Yoav Degani氏はイスラエルのスタートアップに多いシリアルアントレプレナーの一人だ。およそ10年間のキャリアの中で3社を起業し、そのうち１社は買収される形でイグジットした。その傍らでスタートアップのメンタリングにも精力的に携わった経験を持つ。「12年間ハイテク産業に関わる中で得た経験から、後続の起業家たちには同じ失敗をして欲しくないという思いでメンターを行っていました。メンターとして関わった企業は500社を超えると思います。しばらくして、自分でも次の冒険をしてみたいと思い、MyPermissions（2016年当時の社名）にジョインしました。」と同氏は振り返る。

参画した当時、同社は既に「MyPermissions」というプライバシー管理アプリケーションを発売しており、一定のユーザーを獲得していた。しかし、より多くの人にリーチするためには、機能を増やして包括性を高めると同時に、専門知識が無くても機能の意図や使い方が理解できるようにUXを改善する必要があった。「当時のアプリケーションサービスは、ユニークで機能もしっかりとした製品に仕上がっていましたが、用途やターゲットが限定的でした。(同氏)」

図１. MyPrivacyのアプリイメージ（同社提供）

◆ オールインワンのスマートフォン向けプライバシー管理アプリ

MyPrivacyが2年の歳月をかけて開発した新アプリには、大きく分けて6つの機能が搭載されている。①位置情報の秘匿化、②写真・動画のロック、③ウェブサイト閲覧情報の秘匿化・広告非表示、④SNSアカウントがアクセスできる個人情報の監視と管理、⑤安全なパスワードの生成と保管、⑥他のアプリに起動時のパスワードを設定（⑥はAndroid版のみ）である。いずれの機能も既存技術を組み合わせているが、全てを一つのサービスに統合し誰にとっても使い勝手が良いUI/UXを設計した点が同社の強みだ。

同社は現在、ユーザーからのフィードバックを元にアプリを改良すると同時に、ディストリビューションパートナーを世界各国で提携し始めている。アプリ開発や保守・運用に専念し、販売やマーケティングをパートナー企業と共に行う考えだ。