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【スタートアップ深層】Eco Fusion - 最適な呼吸法をコーチするデジタルセラピー

毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

今回は、Eco Fusion 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【後編:Facetrom -顔写真から個人のプロファイルを作成】はこちら

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年6月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 

Eco Fusion(https://eco-fusion.com

Dr. Oren Fuerst(Founder and Chairman of the Board)

◆ パーソナライズされたデジタルセラピーでユーザーのストレスを軽減する

 Eco Fusion は、個々のユーザーに対して最適化された デジタルセラピーを提供するプラットフォームを開発し ている。ユーザーの健康状態をAI が解析し、一人ひとり の特徴や性質に合わせて、リラクゼーション効果が得ら れる最適な呼吸法をレクチャーする。 今回は、創業者であり取締役会長を務めるOren Fuerst 博士に、現在注目が集まる遠隔医療やデジタルヘ ルスの領域のビジネス機会について取材した。

 

◆ 3 分間のセラピーでストレスレベルを最大20%減少させることに成功

図1. アプリによる生体情報のモニタリング(同社HP より) 無料ダウンロード可能(一部有料サービス有り)

図1. アプリによる生体情報のモニタリング(同社HP より)

無料ダウンロード可能(一部有料サービス有り)

 Eco Fusion が開発するスマートフォン用 アプリケーションのSerenitaTM は、スマー トフォンのライトに指を当てることで、簡 単にストレスレベルの測定を行うことがで きるサービスだ(図1)。センサーデータ から心拍数や呼吸の変化、血圧といった生 体情報を検出し、ユーザーのストレスレベ ルを数値化することができる。医療分野の 専門家とAI 分野の専門家とで共同開発した 解析技術を用いて実現した。さらに、スト レスレベルを減少させ、リラクゼーション効 果を得るのに適した呼吸法を、ユーザーに合 わせてアドバイスしてくれる。

 同社の創業者であるOren 氏は、「3 万人を対象として弊社が行ったプログラムでは、高いストレ スを感じている人のストレスレベルがたった3 分間で20%減少するという結果が得られました。さ らに、数日後もストレスレベルの減少傾向が続いた人が84%を占めていました。」と述べた。

 

◆ ユーザーの特性をAI が学習し、パーソナライズされたセラピーを提供

 Eco Fusion の独自性は、ユーザーの呼吸パターンがストレスレベルや集中力の変化とどのように 関係しているかをAI に学習させることで、ユーザーにとって最も効果が高いと考えられる呼吸法を レクチャーすることができる点にある。アプリ画面に表示される「息を吸う→止める→吐く」の指示 に従ってユーザーが呼吸法を実践していくと、ストレスレベルを表す値が更新される。はじめはいく つかの呼吸パターンが提示されるが、やがて最も効果が高かったパターンに落ち着く。 「一般的に、瞑想によってリラクゼーショ ン効果を得たり集中力を高めたりするにはあ る程度の練習が必要です。しかし、Serenita がアドバイザーとなることでこれらを簡単に 実践することが可能です。弊社の役目は、健 康状態のモニタリングだけを行うのではな く、個人にマッチしたセラピーを提供するこ とだと考えています。実際、Serenita を活用 することで血糖値や体重の減少といった効果 が得られることが報告されています(同 氏)。」

自動車に様々なアプリケーションがインストール可能に(同社HPより)

図2. AI による呼吸レッスンの様子(同社HP より)

◆ COVID-19 の影響を受け、遠隔でのメンタルヘルスケアの重要性が増加

 同氏によると、メンタルヘルスを良好に保つことは、免疫力の向上に寄与するだけでなく、理性的 な意思決定を促すと考えられており、特に遠隔医療の文脈から近年注目が集まっているという。「例 えば、弊社のサービスをがん治療と組み合わせて、腫瘍の切除手術前に心理面でのケアを行うという 試験的プロジェクトが行われています(同氏)。」

 また、糖尿病や高血圧といった慢性疾患の治療は、通院型からより持続性が高く効率的な遠隔型に 変化していくと同氏は予測している。「多くの人々は現在、遠隔療法を求めており、今後も、以前の ような通院スタイルに戻りたいとは考えないと思います。以前は病院で行われていた治療の多くが今 後遠隔に変化していくでしょう。このような状況の変化に素早く対応していかねばなりません(同 氏)。」今後は、弊社のサービスをその他の医療機器と組み合わせる「ジョイント・メディケーショ ン」を戦略として市場を開拓していきたいという展望を語り、話を締めくくった。

 
BLender社CEOのGal Aviv氏

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 弊社はすでに、米国やイスラエルを中心に世界中の企業や医療機 関と共同開発を行っています。また、弊社に関わりのある研究の共 著者には日本の企業や個人も含まれています。日本国外の企業だか らという理由で恐れを抱く必要はありません。COVID-19 の影響を 受けて、人々の生活スタイルやニーズが大きく変化しようとしてい る中で協業できることを楽しみにしています。

− Eco Fusion CEOの Oren Fuerst 博士

 

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 6月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

【後編:Facetrom -顔写真から個人のプロファイルを作成】はこちら

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