イスラエルと日本の事業提携ニュース最前線(2017年まとめ)
近年、日本でもイスラエルが「スタートアップ大国」として認識されるようになった。しかし、実際にイスラエルと日本との間でどのような取引が行われているのかまで把握している人は意外と少ないように思う。
しかし実際のところ、昨年はイスラエルと日本にとって様々な分野でビジネスが行われ、大規模な取引が話題になった一年だった。今回は、2017年に両国間で行われた印象的なビジネスについて、ご紹介したい。
イスラエルと日本の間で取引が盛んな分野というと、AutomotiveとCyber Security 、そしてMedicalの3つの分野だろう。この3分野に焦点をあて、特に印象に残った取引を紹介していきたい。
1.自動運転技術(Automotive)
*写真はAutomotiveやSmart City関連のスタートアップが一同に集まり、VCや投資家向けに開催されたイベント「Ecomotion Event」の様子。勢いのあるイスラエルのAutomotive、Smart City関連のスタートアップ約50社がピッチを行った。
周囲をアラブ勢力に囲まれ常に軍事的緊張にさらされてきたこと、そして水など資源の乏しい中でITやテクノロジーを国の経済成長の重点施策としてきた特殊な背景から、イスラエルは音声・画像認識、センサー、サイバーセキュリティなどにおいて高い技術を有している。
そしてこれらの技術は、自動車業界や自動運転車に搭載されるチップなどにも活用されるため、イスラエルは自動車メーカーやAutomotiveに活用するチップを作る半導体メーカーから大きな注目を集めているのだ。
自動車業界ではGM,Ford, ダイムラーなどが、そして半導体メーカーではSamsungやIntelなどが、イスラエルにR&Dや投資の拠点を置いている。
日本の自動車メーカーや半導体メーカーも類にもれず、2017年には日本とイスラエルとの間で以下のような取引や協業のニュースがあった。
2.サイバーセキュリティ(Cyber Security)
* 世界中のサイバーテックカンパニーがイスラエルに集まったカンファレンス「CyberTech2018 」
日本に向けたサイバー攻撃の件数は年々増加している。国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)によると調査を始めた2005年には約3億1千万件だったが、2014年は約256億6千万件、2015年は約545億1千万件、2016年1281億件とこの数年の増加が著しいのは明らかだ。
また近年IoT関連機器を狙った攻撃が急増している。2015年は全体の約26%だったが、16年は初めて半数を超えた。セキュリティー対策が不十分な製品が多く、サイバー犯罪者の標的になっていると言われる。(サイバー攻撃1281億件 16年、IoT機器狙い急増:日本経済新聞 )
このように日本企業にとってサイバーセキュリティの強化は急務である。急増し、また多様化するサイバー攻撃から企業の知的財産や顧客情報、機密性の高い文書を守り、万が一に備えた対策を講じなくてはいけない。高いサイバーセキュリティ技術を有するイスラエルに注目が集まるのは必然と言える。2017年、サイバーセキュリティの分野では以下のような取引があった。
3.メディカルヘルス(Medical Health)
* 日本の経産省が主催したMedTechのイベント「Japan MedTech」ー多くのメディカル・ヘルスケア分野のイスラエルスタートが集まっていた。
毎年イスラエルでファンドレイズするハイテクスタートアップの20%近くがライフサイエンス関連の企業だと言われる。医薬品や高精度センサーを活用した最先端の医療機器開発でも世界トップクラスの水準を誇り、スマートフォンを活用した健康管理システムの開発、実用化を積極的に進めていることで知られている。そんなイスラエルのメディカルヘルス市場でも日本との事業提携は着々と進んでいる。2017年は以下のような提携ニュースが発表されている。
各分野で紹介したニュースは一部に過ぎない。2017年はやはり、AutomotiveやCyber Security、メディカルヘルスの分野でのビジネスの活性化が顕著であった。しかし、FinTech やAdTech, EnergyやBioTechなど幅広い事業分野でイスラエルと日本の企業間での事業提携が進みつつあり、今後さらにその流れは加速していくだろう。
Jakoreも先日イスラエルの有力調査会社IVCリサーチセンターと提携を発表したばかりである。イスラエル企業との協業やM&Aに関心を持つ日本企業が増えるなか、現地から質の高い最新情報を日本語で配信していきたいと考えている。
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