イスラエルは危険?!海外ビジネス現地現物の重要性
日本にとっては馴染みが薄いと言っても過言ではない国、イスラエル。
イスラエルの印象を日本人に尋ねると、大抵の人が「あぶない」「危険」「遠い」といったフレーズを連想するようだ。確かに宗教紛争やガザ地区など危険なエリアがあるのは事実だ。実際にミサイルが飛び交うことも過去にはあったし、建物にはシェルターが常設されているところも数多い。
しかし、イスラエルの全てが危険というわけではない。
スタートアップ企業のひしめくテルアビブは、安心して過ごせる平和な近代都市だ。食べ物も美味しく衛生的だし、スリなどの軽犯罪もほとんどない。夜中に一人で街を歩いても全く問題ない。
トランプ発言時のテルアビブは?
2017年12月6日、アメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認定する旨の発表があった。国際問題に発展する話題で、現地で緊張が高まっているという報道が数多くみられた。
ちょうどこの翌日からイスラエルへ出張の予定が入っていた。周りからは心配の声が寄せられたがスケジュールを変えるわけにはいかず、そのまま現地入りした。
現地入りしてみると、少し拍子抜けした。たしかにアメリカ大使館前ではデモなどが行われていたが、日常生活においては何ら変わった様子はなかったのだ。ビジネスシーンでは国際問題による緊迫した空気を感じることは全くなく、普段通りのビジネスが行われていた。
日本とイスラエル、実際に危険なのは・・・
さて、日本で思い込まれている”イスラエルは危険だ”という印象についてイスラエル人と話すと、「北朝鮮と隣り合わせの日本の方が危険なのではないか?」とく言われる。
2017年現在、たしかに北朝鮮の行動に対して緊張が高まっている。ミサイルが発射され、Jアラートがなることもしばしばだ。しかし、アラートが鳴ったからといってどうすればいいのだろうか?平和慣れしている日本人は対策などしていないため、正直どうすることもできない。しかし、イスラエルではシェルターへの避難など既に対策が施されている。
イスラエルでは空港でのセキュリティチェックは厳重だし、商業施設に入る前にもセキュリティチェックをされることが多い。一方、日本ではセキュリティチェックはほとんどないため、テロなどを未然に防ぐことは非常に難しく感じる。もちろん、セキュリティチェック自体は時間も手間もかかり、気分のいいものではないが、日本とイスラエルを比べて日本の方が危険なのではという意見があることも納得できる。
見て見ぬふりできないイスラエル人
先日、イスラエル在住10年の日本人女性と話す機会があった。
「イスラエルでは子供を外で遊ばせているときに目を離しても、そんなに危険を感じることがない。イスラエル人は見て見ぬふりができない。何かが起きても必ず誰かが騒いでくれる。困っている人がいたら見ず知らずの人でも必ず助けてくれる。」
イスラエルでは徴兵制度があるため、自立心が自然と身に付くと言われる。そしてすぐに行動に移す文化的な側面があるため、見て見ぬ振りができないのだろうとのことだった。
この話を聞き、今回の出張でも思い当たることが2回ほどあった。
ひとつは行きの飛行機のなかで。
現地に着く前に携帯電話の充電をしておきたくて、座席近くで電源を探した。しかし自分の座席にはついておらず、隣の人の座席の下にしか電源がなかった。充電が足りないというわけでもなく話しかけるのも億劫だったので、私は使うのを諦めようとした。ところがその様子をみていたらしく、急に「これ使いなよ!」と話しかけられたのだ。おかげで、充電満タンでイスラエルに入国することができた。
イスラエル人は見て見ぬふりができないのだ。
もうひとつはタクシーでの出来事。
テルアビブから少し離れた街までタクシーで向かい、お客様と打合せをしていた。その後の移動も同じタクシーで行くことになり、ドライバーの方には打合せ終了時間に合わせて戻ってきてもらうことにした。
打合せが想定よりも長引きそうになったので、私だけ先に席を立ち、待たせていたタクシーのドライバーに説明をしにいった。
「打合せの終了までまだあと少し時間がかかる。仲間があとから来るから少し待ってもらえないか。」と伝えたところ、了承し待っててくれることになった。
そしてタクシーから離れ、ビルの入り口付近で仲間が出てくるのを待っていると、ドライバーがやってきた。わざわざ車を降りてきて、「暗くもなってきたし、寒いし、待つならタクシーの中で待ちなよ」と見かねて声をかけてくれたのだ。
ただ、他にも何台か車があり「ありがたいけどタクシーの中にいると外から分からなくなりそうだから、このまま外で待つよ。」と伝えると、分かったと車に戻っていった。
自分がタクシードライバーだったら、車から降りるのが面倒なので放っておくだろう。
イスラエル人は見て見ぬふりができないのだ。
現地現物、そして事象をどう捉えるか?
アフリカに靴を売りにいった有名な営業マンの話がある。
アフリカには靴の競合が進出していない。A社とB社はそれぞれ、エース級の営業マンを現地に送り込む。そこでみた光景はアフリカ人は靴を履いていないという事実だった。
A社の営業は「アフリカには靴の市場がない。進出はやめましょう。」と本社に伝えた。
B社の営業は「アフリカ人はまだ靴を履いていないということはとても大きな市場がある。どんどん靴を送ってください。」と本社に伝えた。
この話は、物事をどう捉えるか?ということを考えさせるために利用されるケースが多い。一見、B社のような考え方をしようという教訓に聞こえる。しかし実際のビジネスでは本当に一足も靴が売れないかもしれないので、A社の判断が正しいことも大いに有り得る。
ただ、大切なことはちゃんと現地の情報を自分たちで確認すること。
メディアの報道や勝手に思い描いている印象だけでは正しい判断はできない。現地に行き、現物に触れることが海外ビジネスでは必須だと改めて感じている。
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