「大きな可能性を秘めた日本とイスラエルの関係」 -元イスラエル経済産業省事務次官アミット・ラングの手紙-
優先順位の低かった日本との関係構築 イスラエル経済産業省の仕組みを知ったのは2013年の半ば、経済省の事務次官に就任してからであった。経済省がイスラエルの経済における外交活動も行っており、44カ国に180人を派遣している事を初めて知った。
イスラエル経済省の業務内容は、イスラエル企業、ならびに、イスラエルと国交のある国々と輸出を行う業者を支援することだ。その他にも、イスラエル企業に投資を考える外国企業を発掘し、投資活動の支援もしている。また、様々な国々の貿易組織や、ワールドバンク、研究開発に投資する銀行等、その他のグローバル企業と関係を築き、貿易協定を結ぶ事も大切な役割だ。
仕組みや業務内容を理解した後、それぞれの国に対するプログラム内容を確認した。
イスラエル経済省は、東アジアとの経済交流に重点をおいており、特に中国、韓国、ベトナムへの優先順位が高かった。当時、経済班を派遣しているのにも関わらず、日本への優先順位は低い状態だった。
日本の優先度が低い事に違和感を感じたことを覚えている。なぜなら、私は柔道のオリンピック選手として日本を何度も訪れ、どのような国であるかを十分理解していたからだ。エコノミストの観点からも、日本市場は発展しており、グローバル市場にも目を向けていると知っていた。
当時の私は、大きな可能性を秘めている日本と以下の4点を理由に貿易関係を強化するべきだと考えていた。
1、2013年における東アジア諸国との貿易額は20憶ドルであり、2013年以前は貿易額が30億ドルを超えた。つまり、年間30憶ドル以上となる貿易取引の可能性を秘めている。
2、イスラエルはイノベーション国家へと発展しており、シリコンバレーと大差が無くなりつつある。また日本も経済の低迷を乗り越え、イノベーションを求めている。この事は安倍首相も言及している。
3、日本の製造業は品質がとても良く、アジアやその他のグローバルな市場に繋がりがあるため、大量に生産し販売する事ができる。その為、イスラエルのテクノロジーと高品質な日本の製造業が手を組めば可能性はより大きく広がる。イスラエルは日本の競合相手ではなく、相補的な存在であるため、両国が利益を得る事ができる。
4、日本市場は発展しており、他の東アジア諸国に比べるとイスラエル市場に類似している。また、日本とイスラエルは、計画経済や発展途上経済ではなくオープンな市場なので取引しやすい。
日本とイスラエルの関係を強化する
私は経済省の官房長を呼び出し、東アジアを優先度が高い地域と指定しているのに、なぜ日本が優先度の高い国々の中に含まれていないのかと尋ねた。官房長は、過去の日本企業や政府機関との共同研究開発の試みにおける失敗経験や、文化の相違によるコミュニケーションの難題が原因だと大雑把で曖昧な返答をした。
私は、「官房長の回答は受け入れることはできない。日本とのビジネス交流に向けて新しい計画を立てます。そして、日本の優先順位を東アジアの中で一番にします。」と伝え、日本の企業や政府機関と会い、状況を把握するために日本への出張願いを申請した。
さらに私は、官房長に文化の相違などは他の東アジア諸国にも存在するが、習慣や文化を学び、理解し、辛抱強く繰り返し挑戦する事で乗り越えられると説明した。
2013年12月に経済産業省事務次官として初となる日本出張を実施した。大阪や東京を訪れ、多くの日本企業や政府機関の方々と面談を行い、イスラエル市場やイノベーション(ハイテク産業・スタートアップ企業)に対する高い関心を感じた。 政府機関との面談時には、安倍首相が日本企業にもっと世界に進出し、海外の企業とイノベーションを促進するように促していると聞き、ポテンシャルが高いと確信した。
イスラエルに戻った後、イスラエルの首相を通す事で日本とイスラエルの関係をより強化できると考え、首相と直接コンタクトがとれる当時のイスラエル首相府事務総長、ハレル・ロッケルに緊急の面談をお願いした。ハレル・ロッケルとの面談では日本訪問で感じ取ったポテンシャルの高さを伝えた。すると彼は、首相も既に知っており、関係を強める準備をしている最中だと言った。そして、まもなく首相は日本への訪問を発表し、翌年2014年5月に安倍首相と首脳会談を実施した。
首脳会議は成功に終わり、両国の政府機関や企業による新たな面談やミッション派遣等へとつながった。さらに、私とハレル・ロッケルの強い働きかけにより、両首脳は日・イ間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明に署名し、日本とイスラエルの絆はより一層深いものになった。
任期中は両国の絆を深める活動を積極的に続け、投資家のカンファレンスや、その他の日・イビジネス関連のイベントを開催し、更に大阪に西日本イスラエル貿易事務所を開設した。 そして2015年11月に再度日本を訪問。面談した日本企業の中には前回の訪問時にお会いした企業も多く、殆どがイスラエルについて認識があった。加えて、中にはイスラエルとのビジネスへの一歩を踏み出している企業あり、2013年の訪問と比べると肯定的な変化の感触があり嬉しく思った。
これからの日本とイスラエルの関係
私は、まだ道のりは始まったばかりで、可能性をたくさん秘めていると感じている。これまでに日本とイスラエル間で結んできた様々な重要な協定(投資の自由化,促進及び保護に関する日本国とイスラエル国間の協定や、日イスラエル・イノベーション・パートナーシップの共同声明等)によって両国間の貿易は拡大すると考えている。
しかし、これからも文化の相違という壁を乗り越えなければならない。
乗り越えるには、高基準で正確に整理されている日本の商文化や風習を学ぶ必要がある。そしてこれらはイスラエルのビジネスにおける進め方において補足すべき点でもある。
ジャコーレへの参加と期待すること
Yony Golanからジャコーレ株式会社のアドバイザーとなる依頼を受けたとき、これまでの経験を活かすことで、今後の日本とイスラエル間の関係性の発展に貢献できると思い快諾した。
ジャコーレは私と同様に、日本とイスラエル間には大きな可能性があると信じている。
創業者であるShintaroとYonyは日本とイスラエルの経済を深く理解しているため、両国の文化におけるギャップを埋めて経済を繋げる事ができるだろう。日本とイスラエル間で事業を拡大したいと考える企業は、ぜひジャコーレの支援を受けることをお勧めする。彼らの豊富な経験によって成功を収めることができると私は確信している。
アミット・ラング
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